「児童養護施設退所者等奨学基金」で進学を支援しよう

東京都 世田谷区(とうきょうと せたがやく)

学習風景のイメージ

アイコンの説明:外部リンク

  • facebookでこのページをシェア
  • twitterでこのページをシェア

施設の若者の学びたい気持ちを応援

大学進学率が年々高まる一方、児童養護施設等で育った子どもの多くが経済的な理由から進学を断念せざるを得ない現状です。そんな子どもたちの学びたい意欲に応えようと世田谷区が積極的に取り組んでいるのが、『児童養護施設退所者等奨学基金』制度です。スタートから今年で3年目。これまでに19人の若者の不安を安心に変えてきました。

施設を退所した後に直面する厳しい現実

  • 世田谷区上北沢にある児童養護施設『社会福祉法人 福音寮』の外観
  • 『社会福祉法人 福音寮』施設内の様子

世田谷区上北沢にある児童養護施設『社会福祉法人 福音寮』の外観(左)と施設内の様子(右)

児童養護施設で過ごせる年齢は18歳まで。これは、児童福祉法によって定められています。近年は22歳までの延長措置を受けるケースも増えていますが、多くの施設退所者は高校卒業と同時期に退所し、経済的自立を強いられています。そのため、生きていくために進学を断念し、就職を選ぶ若者が大半です。これは数字にも表れており、平成29年度の厚生労働省の資料によると、全高卒者の74%が大学や専門学校へ進学しているのに対し、施設退所者は24%と大きく下回っています

2020年に導入される高等教育無償化への期待は高まるものの、施設退所後は学費のみならず、生活費も自分で捻出しなければなりません。これは、学校生活を継続するうえで大きな負担になって若者の肩にのしかかります。進学を果たした若者の多くは、高校入学と同時にアルバイトを始めて学費を稼ぎ、大学や専門学校入学後も複数のアルバイトを掛け持ちしながら、学業と生活基盤を支えています。しかし、両立の難しさから中退を選ぶ施設退所者は全体の3割にも及び、これは全国平均の3倍の水準です。ここからも学生生活を送ることの難しさを読み取ることができます。

年間36万円(上限)を卒業年度まで毎年支給

取材に応じてくれた、世田谷区 若者支援担当課主任 御堂誠さん
取材に応じてくれた、世田谷区 若者支援担当課主任 御堂さん(撮影/前田彩夏)

児童養護施設を巣立った若者の社会的自立に向けた支援を行うことを目的に、世田谷区が全国に先駆けて創設したのが、「児童養護施設退所者等奨学基金」制度です。

「現在、多くの施設退所者が学業とアルバイトに追われ、心身共に張りつめた生活をしています。基金は、そういった若者の不安を少しでも取り除き、学業の支えになれればという思いから平成28年にスタートしました」と世田谷区 若者支援担当課主任 御堂さんは話します。

創設から2年半が経った今、この想いに賛同する寄付者からの基金は、累計5900万円に達しました(平成30年6月現在)。これまでにこの制度を利用して19人が進学を果たし、奨学金の給付を受けながら学業と生活を両立させています。

給付の対象は、区内の児童養護施設等を退所した18歳以降の若者のうち、高校卒業から5年以内、かつ大学等への進学希望者となり、受給は卒業年度まで受けられます。
奨学金を利用された方は養護施設退所者等の平均より非常に高い割合で卒業を果たしており、現在受給中の学生もまた誰一人中退することなく学業に励んでいます(養護施設対象者等中退率 約3割)。

子供の学習風景イメージ

学生からは、「奨学金のおかげで負担が減った」「生活に余裕ができた分、勉強に集中できる」という声が届いています。さらには、「児童養護施設のなかでも前向きな変化が表れている」と御堂さんは話します。
「以前は、施設側も子どもたちに就職を勧めていたそうですが、基金スタート後は、進学希望の子どもを後押しするようになったそうです。平成30年度は9人への給付が決定しています。この基金が進学を希望する子どもたちの支えになっていることを実感しています」

なお、『児童養護施設退所者等奨学基金』は、世田谷区が取り組む、『せたがや若者フェアスタート事業』の一環であり、奨学金のほか、区営住宅の空室を退所者に月1万円の家賃で提供する「住宅支援」、退所者と地域の大人の交流を目的に、区内2ヶ所で各月に1度開催される「居場所支援」の3つを柱としています。

『住宅支援』は、退所者の生活基盤を整えることにつながり、『居場所支援』もまた、退所者同士や、退所者とボランティアとして関わる地域の支援者の方々と上下斜めの人間関係を構築する場として活用されています。地域の大人や施設出身の先輩の話は、学生にとって将来のイメージを具体的に描くきっかけになっています」

『児童養護施設退所者等奨学基金』への寄付はふるさと納税の対象となり、世田谷区民が行う場合もまた、寄付金控除による税制優遇措置が受けられます。

「寄付していただいた方には、事業報告書をお送りしています。報告書には、受給中の学生の声も掲載しています。多くの若者が寄付者の善意を励みに頑張っている姿をお届けすることで、賛同していただける方をさらに募り、この取り組みをますます意義あるものにしたいと思っています」

「一人で生きていくのに学歴が必要だと思った」

『児童養護施設退所者等奨学基金』を活用して毎月3万円を受給して経営学部に通う、大学3年生の里見さん
『児童養護施設退所者等奨学基金』を活用し、給付型奨学金を受給して経営学部に通う、大学3年生の里見さん(撮影/前田彩夏)

実際に奨学金を受けている大学3年生の里見さん(仮名)は、区内の児童養護施設『福音寮』で3歳から18歳までを過ごし、その後は大学2年生まで住宅支援を活用していました。里見さんが奨学金の存在を知ったのは高3の夏。当時はすでに志望校が固まり、学費を含めた大学生活にかかる費用のシミュレーションをおこなっていたと話します。

「施設の先生から奨学金の説明を受けたときは、率直にありがたいことだと感じました。最初の2年は貯金で工面し、3年生からは奨学金を借りようと考えていたので、お金の心配が少し軽くなると分かり、気持ちがホッとしました」

里見さんが進学の意思を固めたのは、高1のとき。費用は日々のアルバイトで貯めたと言います。

「これから一人で生きていかなければならないと考えたときに、私には"学歴"という後ろ盾が、普通の家庭で育った人以上に必要と考え、将来の自分のために進学したいと思いました。今も土日も含めたほとんどの時間をアルバイトに費やしているので、自分の時間をなかなか持てずにいますが、それでも大学で学べる喜びが勝ります」

そう話す、里見さんにとって給付型奨学金は、「生活の支え」であり、「寄付者からのエール」であると感じているそうです。

「進学を決めた時点では、自分のお金だけで生活できるようにと考えていましたが、実際に暮らしはじめると思うようにいかないことも多く、奨学金に助けられている部分は大きいです。
支援を受けている者として、たくさんの方の寄付によってわたしたちの学びが支えられていることを、多くの人に知っていただきたいと思っています。その先には、施設にいる若者の学べるチャンスが広がっていると信じています」

進学することで拓ける未来があります

進学した若者のイメージ

『児童養護施設退所者等奨学基金』によって、未来ある若者の選択肢が大きく広がっています。
ふるさと納税で、退所した施設の子どもたちの夢を応援しませんか。
若者の未来を応援することは、日本の未来を応援すること。世田谷区は、夢や目標に向かって踏み出そうとする子どもたちへの支援の輪がもっと広がるよう積極的な活動を続けていきます。

編集:Yahoo!ふるさと納税
取材・文:香川妙美(リベルタ)
構成・編集:米本きょうこ(リベルタ)
撮影:前田彩夏
写真:アフロ

ページトップへ戻る